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為政第二 13 子貢問君子章

029(02-13)
子貢問君子。子曰、先行其言、而後從之。
こうくんう。いわく、げんおこない、しかのちこれしたがう。
現代語訳
  • 子貢が人物についてきく。先生 ――「おこないが先、ことばはあとだ。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • こうが君子を問うた。孔子様がおっしゃるよう、「言わんとほっするところを行ってしかる後に言うのが君子である。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 子貢が君子たるものの心得をたずねた。先師はこたえられた。――
    「君子は、言いたいことがあったら、まずそれを自分でおこなってから言うものだ」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • この章では、君子は不言実行の人であることを説いている。
  • 子貢 … 前520~前446。姓は端木たんぼく、名は。子貢はあざな。衛の人。孔子より三十一歳年少の門人。孔門十哲のひとり。弁舌・外交に優れていた。また、商才もあり、莫大な財産を残した。ウィキペディア【子貢】参照。
  • 君子 … 徳の高い立派な人。人格者。
  • 先行其言 … 言うより先に行動する。
  • 而後従之 … (言葉は)そのあとから行動に従ってくる。「之」は、行動・実行。行動してから後に言う。
補説
  • 『注疏』に「此の章は小人の言うこと多くして、行うことのあまねからざるをにくむなり」(此章疾小人多言、而行之不周也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 子貢 … 『史記』仲尼弟子列伝に「端木賜は、衛人えいひとあざなは子貢、孔子よりわかきこと三十一歳。子貢、利口巧辞なり。孔子常に其の弁をしりぞく」(端木賜、衞人、字子貢、少孔子三十一歳。子貢利口巧辭。孔子常黜其辯)とある。ウィキソース「史記/卷067」参照。また『孔子家語』七十二弟子解に「端木賜は、あざなは子貢、衛人。口才こうさい有りて名を著す」(端木賜、字子貢、衞人。有口才著名)とある。ウィキソース「孔子家語/卷九」参照。
  • 子貢問君子 … 『義疏』に「何の徳行を施して君子と為すと謂う可きかを問う」(問施於何德行而可謂爲君子乎)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「子貢夫子に問いて曰く、君子の徳行は何如、と」(子貢問於夫子曰、君子之德行何如)とある。
  • 子曰、先行其言、而後従之 … 『集解』に引く孔安国の注に「小人の言多くして、行いあまねからざるをむなり」(疾小人多言、而行不周也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「答えて曰く、君子は先ず其の言有りて、而る後に必ず行う。行いて以て言う所に副う。是れ行の言に従うなり。若し言いて行わざれば、則ち辞費たり。君子の恥ずる所なり」(答曰、君子先有其言、而後必行。行以副所言。是行從言也。若言而不行、則爲辭費。君子所恥也)とある。また『注疏』に「夫子之に答えて曰く、君子は先ず其の言を行い、而る後に行いを以て之に従い、言・行の相うは、是れ君子なり、と」(夫子答之曰、君子先行其言、而後以行從之、言行相副、是君子也)とある。また『集注』に引く周孚先の注に「先ず其の言を行うは、之を未だ言わざるの前に行うなり。而る後に之に従うは、之を既に行うの後に言うなり」(先行其言者、行之於未言之前。而後從之者、言之於既行之後)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また安井息軒『論語集説』では「先行」で句を切り、「先ず行う。其の言は而る後に之に従う」(先行。其言而後従之)と読む。また宮崎市定も「先行」で句を切り、「先ず行うことだ。言葉はそれから後にしてよい」と訳している(『論語の新研究』177頁)。また加地伸行も「先行」で句を切り、「先ず実行だ。その説明は、実行のあとでする」と訳している(『論語』講談社学術文庫)。
  • 『集注』に引く范祖禹の注に「子貢のうれいは、之を言うことの難きに非ずして、之を行うことの難きなり。故に之に告ぐるに此を以てす」(子貢之患、非言之難、而行之難。故告之以此)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「張氏しょくの曰く、君子は行いを主として、言を以て先と為すに非ざるなり。故に其の言の発する所は、乃ち其の力行の至る所にして、言之に随うなり。夫れ行いを主として、言を後にする者を、君子と為さば、則ち夫の言に易くして、行いまざる者は、是れ小人の帰なり」(張氏栻曰、君子主於行、而非以言爲先也。故其言之所發、乃其力行所至、而言隨之也。夫主於行、而後言者、爲君子、則夫易於言、而行不踐者、是小人之歸矣)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「君子は民に長たるの徳あり。仁以て己がにんと為す。之を行うに在るのみ」(君子長民之德也。仁以爲己任。在行之而已)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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