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為政第二 24 子曰非其鬼而祭之章

040(02-24)
子曰、非其鬼而祭之、諂也。見義不爲、無勇也。
いわく、あらずしてこれまつるは、へつらうなり。ざるは、ゆうきなり。
現代語訳
  • 先生 ――「先祖でもないのに祭るのは、物ほしそう。正義を見送るのは、いくじなしだ。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「祖先の霊というような当然祭るべきもの以外を祭るのは、鬼神にへつらうれつな精神じゃ。」「眼前に正しいことを見ながらそれが断行できないのは、勇気がないというものじゃ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「自分の祭るべき霊でもないものを祭るのは、へつらいだ。行なうべき正義を眼前にしながら、それを行わないのは勇気がないのだ」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 鬼 … (自分の)先祖の霊魂。
  • 諂 … へつらう。こびる。
  • 義 … 人としてなさねばならぬこと。
  • 不為 … 「さざる」と読んでもよい。
  • 勇 … 勇気。
補説
  • 『注疏』に「此の章は祭りは必ず己の親、勇は必ず義を為すを言うなり」(此章言祭必己親、勇必爲義也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 非其鬼而祭之、諂也 … 『集解』に引く鄭玄の注に「人神を鬼と曰う。其の祖考に非ずして之を祭る者は、是れへつらいて以て福を求むるなり」(人神曰鬼。非其祖考而祭之者、是諂以求福也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「へつらうは、おうきゅうなり。鬼神は聡明正直にして、非礼をけず。人若し己の祖考に非ずして之を祭らば、是れ為にへつらいて福を求むるなり」(諂、横求也。鬼神聰明正直、不歆非禮。人若非己祖考而祭之、是爲諂求福也)とある。横求は、ほしいままに貪り求めること。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「人神を鬼と曰う。若し己の祖考に非ずして輒ち他の鬼を祭る者は、是れ諂い媚びて福を求むるを言うなり」(人神曰鬼。言若非己祖考而輒祭他鬼者、是諂媚求福也)とある。また『集注』に「其の鬼に非ずとは、其の当に祭るべき所の鬼に非ざるを謂う。へつらうとは、求め媚びるなり」(非其鬼、謂非其所當祭之鬼。諂、求媚也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 鬼 … 『礼記』曲礼篇下に「其の祭る所に非ずして之を祭るを、名づけて淫祀と曰う。淫祀は福無し」(非其所祭而祭之、名曰淫祀。淫祀無福)とある。ウィキソース「禮記/曲禮下」参照。
  • 見義不爲、無勇也 … 『集解』に引く孔安国の注に「義は、宜しく為すべき所なり。而るに為す能わざるは、是れ勇無きなり」(義、所宜爲也。而不能爲、是無勇也)とある。また『義疏』に「義は、宜しく為すべき所を謂うなり。宜しく為すべき所の事を見て為さざるは、是れ勇敢無きなり」(義者、謂所宜爲也。見所宜爲之事而不爲、是無勇敢也)とある。また『注疏』に「義は、宜なり。義は宜しく為すべき所、而るに為す能わざるは、是れ勇無きの人を言うなり」(義、宜也。言義所宜爲、而不能爲者、是無勇之人也)とある。また『集注』に「知りて為さざるは、是れ勇無きなり」(知而不爲、是無勇也)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「陳氏れき曰く、此の章は、人、鬼の知る可からざるに惑わずして、惟だ力を人道の宜しく為すべき所に用うることを欲するなり。他日、樊遅に語りて曰く、民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざく、と。亦た鬼神を以て義に対して言う。蓋し嘗て之を験するに、天下の人、其の鬼神に諂瀆てんとくする者は、必ず力を民の義に専らにすること能わず、其の力を民の義に専らにする者は、必ず鬼神に諂瀆せず。二者常に相因ると云う」(陳氏櫟曰、此章欲人不惑于鬼之不可知、而惟用力于人道之所宜爲。他日語樊遲曰、務民之義、敬鬼神而遠之。亦以鬼神對義而言。蓋嘗驗之、天下之人、其諂瀆鬼神者、必不能專力於民義、其專力於民義者、必不諂瀆於鬼神。二者常相因云)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「其の鬼に非ずして之を祭る、此れ孔子そしる所有りて之を言う。但だ未だ其の何人なんぴとたるをつまびらかにせざるなり。其の義は則ち樊遅に答うる、民の義を務め、鬼神を敬して之を遠ざく、と相発す。然れどもかれは則ち義円に、而して此れ則ち言うことりんあらず。故に其のためにする所有りて之を言いしを知る」(非其鬼而祭之、此孔子有所譏而言之。但未審其爲何人也。其義則與答樊遲務民之義、敬鬼神而遠之相發。然彼則義圓、而此則言不倫。故知其有所爲而言之)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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