剣門道中遇微雨(陸游)
劍門道中遇微雨
剣門の道中にて微雨に遇う
剣門の道中にて微雨に遇う
- 〔テキスト〕 『澗谷精選陸放翁詩集』前集 巻九(『四部叢刊 初編集部』所収)、『剣南詩稿』巻三(『四庫全書』所収)、他
- 七言絶句。痕・魂・門(上平声元韻)。
- ウィキソース「劍門道中遇微雨」参照。
- 乾道八年(1172)十一月、南鄭(陝西省漢中市)から四川省の成都へ安撫司参議官として赴任する途中の作。四十八歳。
- 剣門 … 山の名。四川省剣閣県の北にある。左右から絶壁が迫り、門を開き剣を立てたように見えるところから名づけられたという。北方から蜀に入る関門。有名な難所。
- 微雨 … かすかに降る雨。小降りの雨。小雨。細雨。
- 陸游 … 1125~1210。南宋の詩人。越州山陰(浙江省紹興市)の人。字は務観。号は放翁。二十九歳のとき進士の試験に一位で及第したが、宰相秦檜に妨害されて殿試で落第させられた。秦檜の死後、三十四歳で初めて官界に入り、福州寧徳(現在の福建省寧徳市)の主簿に就き、さらに都の微官や地方官を歴任した。激情の憂国・愛国詩人でもあり、また自然を愛する田園詩人でもあった。著に『剣南詩稿』八十五巻、『渭南文集』五十巻、『入蜀記』などがある。ウィキペディア【陸游】参照。
衣上征塵雜酒痕
衣上の征塵 酒痕を雑う
- 衣上 … 衣服の上には。
- 征塵 … 旅路のほこり。
- 酒痕 … 酒のしみ。
- 雑 … 混じって汚れている。
遠遊無處不消魂
遠遊 処として魂を消さざるは無し
- 遠遊 … はるかな旅。長い旅。
- 処 … どこでも。どこに行っても。いたるところで。
- 消魂 … 傷心の旅路にあって、魂が身体から抜け出てしまったように感じるほど、悲嘆に暮れている様子。
- 消 … 『澗谷精選陸放翁詩集』(『四部叢刊 初編集部』所収)では「銷」に作る。同義。
此身合是詩人未
此の身 合に是れ詩人なるべきや未や
- 此身 … この私は。この私には。この私にとって。
- 合 … 「まさに~べし」と読み、「~のはずである」「~に違いない」と訳す。推量の意を示す。再読文字。「当」「応」などと同じ。
- 未 … 「~やいなや」と読む。文末に付いて、「そうなのか、違うのか」と聞くときの言葉。「否」と同じ。
- 此身合是詩人未 … この私は、詩人となるべき運命なのか。この私にとって、詩人こそがふさわしい境遇なのか。政治家としての望みを絶たれ、嘆息をふくんだ表現。
細雨騎驢入劍門
細雨 驢に騎って剣門に入る
- 細雨 … 小雨。霧雨。
- 騎驢 … 驢馬に乗って。李白、杜甫、孟浩然、賈島、李賀等、驢馬の背で詩を作った例は唐代に多く、作者はそれらの例を念頭に置いて言っている。
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