祭猫(梅尭臣)
祭猫
猫を祭る
猫を祭る
- 〔テキスト〕 『宛陵先生集』巻四十八(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 五言古詩。書・魚・疎・除・廬・居・餘・猪・驢・歔(上平声魚韻)。
- 祭猫 … 至和三年(1056)、船中で愛猫「五白」の死を悼んで作った詩。
- 梅尭臣 … 1002~1060。北宋の詩人。宣州宛陵(現在の安徽省宣城市)の人。字は聖兪。叔父が高官であったため、科挙を経ずに官職に就いたが、長年地方官を転々とした。嘉祐二年(1057)、科挙の試験官をつとめ、蘇軾や曾鞏を合格させた。当時流行していた美文調の西崑体の詩に反対し、平淡な詩を作った。『宛陵先生集』六十巻がある。ウィキペディア【梅尭臣】参照。
自有五白猫
五白の猫を有してより
- 五白 … 作者の愛猫の名。もと博奕の目の名。恐らく白ぶちの猫であったのだろう。
- 有 … 飼う。
- 自 … 「より」と読み、「~から」と訳す。時間・場所などの起点を示す。
鼠不侵我書
鼠 我が書を侵さず
- 書 … 書物。
- 不侵 … 嚙らなくなった。
今朝五白死
今朝 五白死し
祭與飯與魚
祭りて飯と魚とを与う
- 祭 … 祭る。「祀る」とも書く。
- 与飯与魚 … 飯と魚を供えて。最初の「与」は「与う」と読む。「飯」の後に「と」と送り仮名をつけ、「与魚」は「魚与」と読み、「を」と送り仮名をつける。
送之于中河
之を中河に送り
- 之 … 五白を指す。
- 中河 … 川の中ほど。
- 于 … 置き字として読まない。
- 送 … 見送って葬る。水葬にする。
呪爾非爾疎
爾を呪するは爾を疎かにするに非ず
- 爾 … お前。五白を指す。
- 呪 … 祈禱する。穢れを祓う。『宛陵先生集』(『四部叢刊 初編集部』所収)では「况」に作る。
- 疎 … 疎んじる。粗末に扱う。
昔爾齧一鼠
昔 爾 一鼠を齧み
- 一鼠 … 一匹の鼠。
- 齧 … 嚙んで捕まえる。
銜鳴遶庭除
銜え鳴きて庭除を遶れり
- 銜 … 口にくわえる。
- 庭除 … 庭。「除」は建物から庭に降りる階段。「庭」と「除」の二字で庭全体を指す。
- 遶 … 駆け回る。
欲使衆鼠驚
衆鼠をして驚かしめんと欲し
- 衆鼠 … 鼠ども。
意將淸我廬
意は将に我が廬を清めんとす
- 将 … 「まさに~んとす」と読み、「~しようとする」と訳す。再読文字。
- 清我廬 … 我が家から鼠を一掃する。
一從登舟來
一たび舟に登り来りてより
- 登舟来 … 船に乗り込む。
- 従 … 「より」と読み、「~から」と訳す。「自」と同じ。
舟中同屋居
舟中 屋を同じうして居る
- 同屋居 … 同じ屋根の下に暮らしてきた。船旅に愛猫を連れて行っていたことがわかる。
糗糧雖甚薄
糗糧 甚だ薄しと雖も
- 糗糧 … 干し飯。携帯用・保存用の食糧とする。
- 薄 … 乏しい。
免食漏竊餘
漏窃の余を食うを免る
- 漏窃余 … 鼠が小便をひっかけたり、かじったりした残り。
- 免食 … 食べずに済んだ。
此實爾有勤
此れ実に爾の勤むる有ればなり
- 爾有勤 … お前の働きのおかげだ。
有勤勝雞猪
勤むること有るは鶏猪に勝る
- 鶏猪 … ニワトリとブタ。
世人重驅駕
世人は駆駕を重んじ
- 世人 … 世間の人。
- 駆駕 … 馬車を利用すること。
謂不如馬驢
馬驢に如かずと謂う
- 馬驢 … 馬と驢馬。
- 不如 … 「~にしかず」と読み、「~に及ばない」「~の方がよい」と訳す。比較する言い方。
已矣莫復論
已んぬるかな 復た論ずる莫けん
- 已矣 … もうだめだ。もう仕方がない。
- 莫復論 … これ以上言うのはやめよう。
爲爾聊欷歔
爾の為に聊か欷歔す
- 聊 … 少しばかり。わずかばかり。
- 欷歔 … すすり泣くこと。
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